ニュースの概要
特殊清掃と遺品整理を手がけるマインドカンパニー合同会社が、孤独死や事故死の現場に残る死臭について、ニオイ測定器の数値で消臭の完了を判定する「ゼロメトリー法」の運用を始めた。施工の前後に、発生源の付近や各部屋の中央など複数の地点を測定する。施工後は窓や扉を閉めて2時間置き、あらためて測り直す。すべての地点で数値がゼロにならなければ、追加料金を取らずに再施工する。これまで消臭の出来は作業員の嗅覚や経験に頼る面が大きく、依頼者が仕上がりを客観的に確かめにくかった。その弱点を数字で埋める試みである。
引用元: 死臭を数値で判定する特殊清掃の消臭保証「ゼロメトリー法」を開始(Excite News)
分析・見解
「においが消えたか」を人の鼻で決めてきた限界
特殊清掃の現場では、においの消え具合を最終的に作業員の鼻が判断してきた。長年の経験がある人ほど感覚は鋭い。しかし、その感覚は本人にしか見えない。依頼者から見れば「職人が大丈夫と言うから信じるしかない」状態になる。
しかも人の鼻は同じにおいを嗅ぎ続けると慣れてしまう。数時間作業した後の判断は、入室直後の人とは違ってくる。これは個人の技量の問題ではなく、人間の感覚そのものの性質である。
施工後2時間の密閉が、測定の価値を決める
今回の方式で目を引くのは、測定器を使うこと自体よりも「窓と扉を閉めて2時間置く」手順だ。換気した直後は、空気が入れ替わって一時的ににおいが薄れる。その状態で測れば、数値はきれいに下がって見える。
一方、密閉して時間を置くと、床材や壁紙、下地の奥にしみ込んだ成分が少しずつ空気中に戻ってくる。ここで数値が出なければ、においの元まで届いている可能性が高い。つまりこの手順は、表面だけの消臭を見抜く仕組みとして働く。
数値ゼロという厳しい基準が持つ意味と限界
全地点でゼロという基準は、かなり厳しい。ただし測定器は機種ごとに、反応するにおいの成分と感度が決まっている。ゼロと表示されても、人が不快に感じるにおいが完全にないとは言い切れない。逆に、機器が拾う成分は残っていても、人はほとんど感じない場合もある。
独自の視点として押さえたいのは、この方式の価値が「科学的な絶対証明」ではなく「合意のものさし」にある点だ。依頼者、管理会社、業者が同じ数字を見て、完了か未完了かを話し合える。この共通言語ができることが、トラブルの減少につながる。
類似の事例と、業界全体への波及
住宅分野では、新築のシックハウス対策で化学物質の濃度を測り、基準値と比べる方法がすでに定着している。においの世界でも、同じように測定値で品質を示す流れが出てきたと見ることができる。
今後、他社が追随すれば、測定の条件や機器の違いで数字が比べにくくなる恐れがある。そのため、測定地点の数、待機時間、使用機器を公開する姿勢が、業者の信頼を左右するようになるだろう。
ビジネスへの影響
管理会社とオーナーは、見積もり段階で測定条件を確認する
賃貸物件で孤独死が起きた場合、においが残ると次の入居募集に響く。管理会社やオーナーにとって、再施工が追加料金なしで受けられる保証は、費用の見通しを立てやすくする。
見積もりの際は、次の点を必ず聞いておきたい。どの機器で、何か所を、いつ測るのか。ゼロの定義は何か。再施工の回数に上限はあるのか。保証の範囲が曖昧なままでは、数値の保証も意味を失う。
清掃業者は数値を、信頼を得る道具として使う
同業者にとっては、測定記録を報告書に添えるだけでも差別化になる。施工前後の数値が残れば、遺族や管理会社への説明が楽になり、後日のクレームにも根拠をもって対応できる。
ただし、保証を掲げるほど再施工のコストは自社に返ってくる。床下や躯体の処理など、根本的な原因除去の技術を磨くことが先決である。
依頼者は「数値」と「施工内容」をセットで見る
依頼する側は、数値だけで業者を選ばないほうがよい。どんな工程で原因を取り除くのか、数値が出なかった場合の対応は何か。この二つを合わせて比べると、納得できる選択になる。心の負担が大きい場面だからこそ、説明が明快な業者を選びたい。
